
特化則と経営者責任:化学物質管理は企業の信頼を守る経営課題
はじめに
製造業では、発がん性や神経障害などの健康被害を引き起こす「特定化学物質」を扱う場面が少なくありません。これらの物質による労働災害を防ぐために定められているのが「特定化学物質障害予防規則(特化則)」です。
しかし、単なる現場のルールとして捉えるのではなく、経営者が果たすべき責任として理解することが、企業の持続可能性と信頼性を守る鍵となります。
特化則とは?
- 根拠法令:労働安全衛生法
- 目的:特定化学物質による健康障害(がん、皮膚炎、神経障害など)から労働者を守る
- 対象物質:第1類~第3類に分類される約75種類以上の化学物質(例:ベンゼン、クロム酸、アスベストなど)
経営者の責任とは?
1. 法令遵守の責任
労働安全衛生法では、事業者(=経営者)は、化学物質による健康障害を防止するために、作業環境の整備、代替物の検討、健康管理の徹底など必要な措置を講じる義務があります。 [・特定化学物質障害予…日労働省令第39号)]
「労働者がばく露される人数・期間・程度を最小限にするよう努めなければならない」— 特化則 第1条 [・特定化学物質障害予…日労働省令第39号)]
2. 管理体制の構築
- 化学物質管理者の選任
- 特定化学物質作業主任者の配置
- 衛生委員会での管理状況の審議
- 自律的なリスクアセスメントの実施 [化学物質による労働災…の新たな規制について]
これらは現場任せではなく、経営層が主導して体制を整えるべき事項です。
3. 教育と啓発の責任
- 雇入れ時や配置転換時の教育の義務化(全業種対象)
- 化学物質の危険性・有害性に関する情報の定期的な見直しと共有 [化学物質による労働災…の新たな規制について]
教育の質は、企業文化の反映でもあります。安全意識の醸成は経営者の姿勢次第です。
4. 記録と説明責任
- 作業環境測定(6ヶ月ごと)
- 特殊健康診断(6ヶ月ごと)
- 記録保存義務(最大30年間)
万が一の事故や訴訟時には、記録の有無が企業の説明責任を左右します。
経営者が怠った場合のリスク
- 法令違反による罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金 [有機則と特化則の違い…確認 – ミドリ商会]
- 労働災害による損害賠償・企業イメージの毀損
- 行政指導・是正勧告・立入検査の強化
まとめ:安全管理は経営そのもの
特化則の遵守は、単なる現場の安全対策ではなく、経営者が率先して取り組むべき経営課題です。労働者の命と健康を守ることは、企業の信頼を守ることでもあります。
「安全はコストではなく、投資である」——この視点を持つことが、製造業の未来を支える経営のあり方です。
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