見えないもの」を測り、世界を形にする巨人:ヘキサゴンと究極の測定アーム「Absolute Arm」

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人気コラムニストとして、今日は産業の深層に君臨する「計測の巨人」、スウェーデン発のテクノロジー企業**ヘキサゴン(Hexagon AB)**の真の姿と、彼らが世に送り出した驚異の測定技術「Absolute Arm(アブソリュートアーム)」に迫ります。


産業の深層に君臨する「計測の巨人」:ヘキサゴン社の正体

私たちが日常で手にするスマートフォン、空を駆ける最新鋭の旅客機、あるいは街を走る電気自動車。それらが寸分の狂いもなく組み立てられ、安全に機能している背後には、必ずと言っていいほど「ヘキサゴン」の影があります。

ヘキサゴン社(Hexagon AB)は、スウェーデンのストックホルムに本社を置く、世界最大級の測定ソリューション企業です。その規模は圧倒的。世界50カ国以上に拠点を構え、従業員数は2万4000人を超えます。売上高は54億ユーロ(約8,500億円以上)に達し、測定機メーカーとしては名実ともに世界トップに君臨しています。

しかし、同社を単なる「ものさし」を作る会社だと侮ってはいけません。彼らが掲げるビジョンは**「Reality Capture(現実の捕捉)」**。物理的な世界をデジタルデータとして完全に取り込み、それをAIやソフトウェアで分析・シミュレーションすることで、製造プロセスの無駄を極限まで削ぎ落とす――。つまり、現実とデジタルの架け橋となる「デジタルツイン」の先駆者なのです。


「精密さ」への偏愛が生んだ、信頼の歴史

ヘキサゴンの強みは、その貪欲なまでの技術統合にあります。かつての名門、ブラウン・シャープやライカ・ジオシステムズといった、世界中の最高峰の計測ブランドを次々と傘下に収め、それぞれの「秘伝のタレ」とも言える技術を一つのエコシステムへと昇華させました。

日本においてもその存在感は絶大です。ヘキサゴン・メトロジー株式会社として国内の自動車、航空宇宙、産業機械といった「ものづくり大国」の心臓部を支え続けています。

現代の製造現場では、「ただ作る」だけでは足りません。マイクロメートル(1000分の1ミリ)単位の誤差を検出し、それを即座に設計データへとフィードバックする。このスピード感と精度こそが、ヘキサゴンが世界のトップランナーから選ばれ続ける理由なのです。


限界を突破する「腕」:HEXAGON アブソリュートアームの衝撃

さて、そんな巨大なバックグラウンドを持つヘキサゴン社が放つ、現時点での「究極の回答」とも言える製品があります。それが、**「HEXAGON アブソリュートアーム(Absolute Arm)」**です。

これまで、精密な測定を行うには、重厚な「固定式」の三次元測定機がある測定室まで、重いワーク(部品)を運ぶ必要がありました。しかし、現場の職人やエンジニアは、もっと自由な、もっと直感的な測定を求めていました。その渇望から生まれたのが、この多関節型ポータブル測定機です。

アブソリュートアームが活躍する未来の製造現場のイメージです。

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なぜ「アブソリュート(絶対的)」なのか?

このアームが革新的である最大の理由は、その名に冠された**「アブソリュート(絶対値)エンコーダ」**にあります。

従来のポータブルアームは、電源を入れるたびに「原点復帰」という準備運動が必要でした。しかし、アブソリュートアームにはその手間がありません。電源をONにした瞬間、各関節の角度を「絶対的な位置」として瞬時に把握します。これにより、現場でのセットアップ時間は劇的に短縮されました。

さらに、驚くべきはその汎用性です。

  1. 接触測定: 高精度のプローブで対象物に触れ、正確な座標を取得。
  2. 非接触スキャン: 最新のレーザースキャナーを装着すれば、複雑な形状の表面を毎秒数十万点という速さでクラウドデータ化。

様々な種類のスキャナーやプローブを装着し、柔軟に対応できる様子です。

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職人の「感覚」をデジタルへ

アブソリュートアームを一度手に取ると、その軽やかさに驚くはずです。人間工学に基づいた独自のカウンターバランサーにより、アームは重さを感じさせず、まるで自分の腕の延長線上にあるかのようにスムーズに動きます。

例えば、航空機の巨大な翼の接合部。あるいは、医療現場で患者に合わせてカスタマイズされる人工関節の複雑な曲面。これまでは「測るのが困難」とされていた場所へも、このアームは軽々と入り込み、真実の数値を導き出します。

結び:未来を測る、準備はできているか

ヘキサゴンという企業が目指しているのは、単なる「計測器の販売」ではありません。彼らが提供しているのは、**「不確実性を排除し、確信を持って未来を創るための力」**です。

世界規模のネットワークと、長い歴史に裏打ちされた信頼。そして、現場の熱量に寄り添うアブソリュートアーム。この強力な組み合わせがある限り、私たちの文明を支える「精度」という名の礎は、これからも揺らぐことはないでしょう。

もし、あなたの現場に「どうしても測りきれない壁」があるのなら、一度ヘキサゴンの扉を叩いてみてはいかがでしょうか。その先には、今まで見えていなかった「正しい世界」の姿が広がっているはずです。


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