【アルミ攻略④】アルミ溶接の難しさ|酸化皮膜と熱の逃げをどう扱うか
この記事は、アルミの溶接で穴あき(ブローホール)や変形に悩んでいる方向けです。
アルミの溶接が「難しい」と言われるのには理由があります。鋼材と同じ感覚で溶接機を扱うと、まず失敗します。原因の中心は、酸化皮膜と熱の逃げ方の違いです。
アルミ特有の2つの壁
壁①:酸化皮膜
アルミの表面は、空気に触れた瞬間に酸化アルミの薄い膜で覆われます。この膜は母材よりずっと融点が高いため、普通に溶接しようとすると、母材が溶ける前に表面の膜だけが残ってしまいます。膜を破って溶かし込む必要があるのが、アルミ溶接の第一関門です。
壁②:熱伝導率の高さ
アルミは鋼材の3倍以上の熱伝導率を持ちます。溶接部に入れた熱が、あっという間に周囲へ逃げていく。そのため鋼材の感覚で電流を設定すると、溶け込みが浅く不十分になったり、逆に熱を足しすぎて母材全体が歪んだりします。
この2つが引き起こす代表的なトラブル
- ブローホール(気泡):酸化皮膜や水分に起因するガスが、溶融池の中に閉じ込められて穴になる
- 溶け込み不足:熱が逃げて十分に溶けず、強度不足になる
- 変形・反り:熱伝導の速さゆえに、広い範囲が加熱・冷却され、歪みが大きく出る
- クラック:急激な温度変化と、合金によっては溶接そのものに向かない組成があることが原因
対策の考え方
溶接機の出力特性を合わせる
アルミ溶接では、酸化皮膜を破るためにプラス極性を使う交流TIGや、パルス機能を持つMIG溶接機が使われます。鋼材用の直流TIGをそのまま使っていないか、まず確認してください。出力特性が合っていなければ、腕でどうにかできる範囲を超えてしまいます。
予熱・入熱管理で熱の逃げに対抗する
厚みのある部材では予熱をして、母材と溶接部の温度差を減らします。パルス溶接で入熱を細かく制御することも、変形の抑制に有効です。
清掃を徹底する
溶接直前にワイヤブラシやケミカル洗浄で酸化皮膜と油分を除去します。地味な工程ですが、ブローホール対策として最も効果があります。
環境面でも見落とせないこと
アルミ溶接では、母材や合金成分によって発生するヒュームの性質が鋼材と異なります。溶接工程の集塵設備が、これまで扱ってきた鋼材向けの想定のままになっていないか、あわせて確認する価値があります。作業環境の管理は、溶接品質そのものとは別の話に見えて、実は換気や粉じんの滞留が入熱管理や視認性にも影響してくる部分です。
まとめ
- アルミ溶接の難しさは、酸化皮膜と熱伝導率の高さという2つの特性から来る
- ブローホール・溶け込み不足・変形・クラックは、この2つが原因になっていることが多い
- 溶接機の出力特性(極性・パルス)がアルミに合っているか、まず確認する
- 清掃の徹底は、地味だが最も効果のある対策
今の溶接機が、扱っているアルミ合金に本当に向いているか。集塵設備を含めて、一度現場を見せていただけませんか。三重県を中心に、中部エリアの現場へ伺います。
アルミ攻略ガイド(全7回)
- 第1回 アルミの種類と選び方|A5052・A6063・A7075・ADC12の違い
- 第2回 アルミは削りやすいのに難しい|構成刃先と溶着をどう防ぐか
- 第3回 アルミの薄物加工|反り・変形を抑える段取りと固定
- 第4回 アルミ溶接の難しさ|酸化皮膜と熱の逃げをどう扱うか
- 第5回 アルマイトと表面処理|見た目・耐食性・寸法変化
- 第6回 アルミでコストを下げる|材料置き換えと歩留まりの考え方
- 総まとめ アルミの選び方から表面処理まで|症状別・逆引きガイド
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