治具を3Dプリンターで作れる?切削加工との使い分けを考える
治具を3Dプリンターで作ることはできるのか。
結論から言えば、用途によっては十分可能です。
特に、
少量だけ必要
軽くしたい
形状変更が多い
複雑な形を作りたい
短納期で欲しい
という治具では、3Dプリンターが有効になる場合があります。
ただし、
高い剛性が必要
高精度な位置決めが必要
高温環境で使う
大きな荷重がかかる
といった治具は、従来通り切削加工や金属製治具の方が適する場合があります。
大切なのは、
「3Dプリンターで作れるか」ではなく、
「その治具に何が必要か」で判断することです。
■ まず治具に求める役割を整理する
治具と言っても役割はさまざまです。
例えば、
・ワークを位置決めする
・ワークを固定する
・組立位置を合わせる
・測定時の姿勢を一定にする
・穴あけ位置を案内する
・部品を並べて保持する
などがあります。
この中で、
強い荷重を受けない
精密な加工基準にならない
作業者の補助が目的
という治具は、3Dプリンターと相性が良い場合があります。
逆に、加工中の切削力を直接受ける治具や、
高い繰り返し位置精度が必要な治具は、
金属製を優先した方がよいことがあります。
■ 3Dプリンターが向くのは「少量・変更が多い治具」
3Dプリンターの強みは、
金型や複雑な加工工程を必要とせず、
3Dデータから直接形状を作れる点です。
特に、
1個だけ欲しい
3個だけ欲しい
来週には使いたい
試してから形を変えたい
という治具でメリットが出やすくなります。
治具を切削加工で作る場合は、
材料準備や加工工程が必要です。
一方、3Dプリンターであれば、
設計変更後に再造形しやすいという利点があります。
そのため、
現場改善の試作治具から始める方法は非常に相性が良いです。
■ 軽量化できる可能性がある
金属製治具は丈夫ですが、
大型になると重くなります。
作業者が一日に何十回も持ち替える治具であれば、
重量は大きな負担になります。
3Dプリンターでは、
内部を中空にしたり、
必要な部分だけ厚くしたりする設計ができます。
そのため、
必要な強度を確保しながら
軽量化できる可能性があります。
ここでは、
金属治具と同じ形をそのまま樹脂に置き換えるのではなく、
3Dプリンター向けに形状そのものを設計し直す考え方が重要です。
■ 複雑形状に強い
切削加工では作りにくい形状でも、
3Dプリンターなら比較的作りやすい場合があります。
例えば、
曲面に沿った受け
複雑なワーク形状に合わせた保持部
内部に配線や空気経路を通す構造
手で握りやすい形状
などです。
つまり、
治具を「四角いブロックから削る」前提で考えなくてもよくなります。
この設計自由度は、
作業性改善や軽量化につながることがあります。
■ ロボットハンドの爪にも使える
自動化では、
ロボットハンドの爪やアタッチメントにも
3Dプリンターを活用できる場合があります。
例えば、
ワーク形状に沿った爪
傷を付けにくい接触部
複数品種向け交換アタッチメント
などです。
多品種少量では、
品種ごとに金属製の専用ハンドを作ると
コストや納期が増えます。
そのため、
共通ハンド
+
交換式の3Dプリント部品
という考え方が有効になる場合があります。
これは前の記事で紹介した
多品種少量のロボット自動化とも相性があります。
■ 検査治具にも使いやすい
測定工程では、
ワークを毎回同じ位置に置くことが重要です。
しかし、
複雑形状のワークでは
専用治具が必要になることがあります。
3Dプリンターを使えば、
ワーク外形に沿った受けや
位置決め形状を作りやすくなります。
例えば、
測定機へ置く向きを一定にする
穴位置を測りやすくする
複数個を同じ姿勢で並べる
といった使い方です。
高い位置決め精度が必要な部分だけ
金属ピンやブッシュを組み合わせる方法も考えられます。
■ 切削加工の方がよい治具もある
ここは重要です。
3Dプリンターで作れるからといって、
すべての治具を置き換える必要はありません。
例えば、
加工基準になる
大きな切削力を受ける
高い平面度が必要
ねじ締結を頻繁に行う
高温環境で使う
長期間繰り返し使う
といった治具では、
金属加工の方が適する場合があります。
つまり、
3Dプリンター
=
安い治具
ではありません。
用途、材質、耐久性、精度まで含めて比較する必要があります。
■ 3Dプリントと金属部品を組み合わせる
実際には、
全部を3Dプリンターで作る必要もありません。
例えば、
ベース部分は3Dプリント
位置決めピンは金属
ねじ部にはインサート
摩耗部だけ交換式
という構成です。
こうすれば、
設計自由度と耐久性を両立できる場合があります。
この「ハイブリッド治具」という考え方は、
3Dプリンター活用で非常に実用的です。
■ まずは低リスクの治具から始める
初めて3Dプリンターを導入する場合は、
いきなり重要な加工治具を置き換える必要はありません。
例えば、
・部品トレー
・測定補助具
・位置決めガイド
・組立補助具
・保護カバー
・ロボットハンドの軽負荷部品
などから始めます。
現場で実際に使い、
強度
耐久性
使いやすさ
交換頻度
を確認します。
その結果を見ながら、
より重要な治具へ広げていく方が安全です。
■ 導入判断は「外注治具」を数えると分かりやすい
3Dプリンター導入を考えるときは、
まず社内で現在外注している治具を数えてみるとよいでしょう。
例えば、
月に何個頼んでいるか
1個いくらか
納期は何日か
設計変更は何回あるか
少量のため割高になっていないか
を確認します。
これを年間で集計すると、
3Dプリンター導入の費用対効果を考えやすくなります。
設備価格だけを見るのではなく、
現在の外注費や待ち時間も含めて判断します。
■ こんな治具は検討しやすい
特に3Dプリンター化を検討しやすいのは、
・1~10個程度しか使わない
・頻繁に形状変更する
・軽量化したい
・複雑形状
・納期を短くしたい
・人が持ち運ぶ
・ワークに傷を付けたくない
・ロボット用アタッチメント
といった治具です。
逆に、
非常に高精度
高荷重
高温
長期間使用
なら、
切削加工や金属製治具を優先して検討します。
■ 釜屋では治具の用途から考えます
3Dプリンターを導入したい場合、
最初から機種を決める必要はありません。
まず、
どんな治具を作りたいのか
現在はいくらで外注しているのか
何個必要なのか
どの程度の精度が必要なのか
どれくらいの荷重がかかるのか
を整理します。
そのうえで、
3Dプリンターで作る
切削加工で作る
金属部品と組み合わせる
という方法を比較します。
「この治具を3Dプリンターで作れるだろうか?」
という現物ベースの相談でも構いません。
3Dプリンターは、
設備そのものより
「何を作るか」を先に考えることが重要です。
自動化・省人化については、
釜屋オンラインの「自動化・省人化」ページでも情報をまとめています。
自動化・省人化について詳しく見る
https://kamaya-online.jp/automation/
3Dプリンターの製造現場での活用全体については、
「3Dプリンターは試作だけ?」
の記事もあわせてご覧ください。
釜屋オンライン


